競馬にはいろいろな距離のレースがありますが、その中でも特に血統が予想の参考になるのが長距離レースです。血統を予想に組み込むには、長距離レースと血統の関係性をある程度把握しておく必要があります。
そこで実際のデータを参考にしながら、長距離レースと血統の関係性を解説していきましょう。
目次
長距離レースに強い血統TOP10
種牡馬 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
オルフェーヴル | 【13.9.8.58】 | 14.8% | 25.0% | 34.1% |
ルーラーシップ | 【12.5.8.65】 | 13.2% | 18.9% | 27.8% |
ディープインパクト | 【10.9.11.90】 | 8.3% | 15.8% | 25.0% |
ハーツクライ | 【9.9.12.67】 | 9.3% | 18.6% | 30.9% |
キングカメハメハ | 【9.7.2.39】 | 15.8% | 28.1% | 31.6% |
ゴールドシップ | 【6.2.4.43】 | 10.9% | 14.5% | 21.8% |
ダイワメジャー | 【5.6.3.35】 | 10.2% | 22.4% | 28.6% |
ジャスタウェイ | 【4.8.4.28】 | 9.1% | 27.3% | 36.4% |
ステイゴールド | 【4.6.2.26】 | 10.5% | 26.3% | 31.6% |
マツリダゴッホ | 【4.4.7.32】 | 8.5% | 17.0% | 31.9% |
※2021年1月1日~2021年11月8日までの集計
※中央競馬芝・ダート2500m以上の成績
2021年11月7日までの、2500m以上のレースにおける種牡馬成績が上の表です。基本的に種牡馬成績のいい馬が多いのですが、中でも長距離血統といわれているオルフェーヴル、ゴールドシップ、ハーツクライ、ルーラーシップなどの名前が目立ちます。
成績のいい種牡馬の中でも、ロードカナロアやキズナ、エピファネイアの名前がないリストになっています。
続いてさらに検索期間を長くし、過去5年間の種牡馬成績を見てみましょう。
過去5年の長距離レースに強い種牡馬ランキング
種牡馬 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
ステイゴールド | 【69.57.52.405】 | 11.8% | 21.6% | 30.5% |
ディープインパクト | 【57.60.48.397】 | 13.2% | 18.9% | 27.8% |
キングカメハメハ | 【51.42.37.351】 | 10.6% | 19.3% | 27.0% |
ハーツクライ | 【50.57.52.412】 | 8.8% | 18.7% | 27.8% |
ハービンジャー | 【31.29.31.206】 | 10.4% | 20.2% | 30.6% |
※2016年1月1日~2020年12月31日までの集計
※中央競馬芝・ダート2500m以上の成績
過去5年の種牡馬成績TOP5です。これを見ると、長距離血統というよりは、ここ5年間で活躍した種牡馬が上位に来ていることが分かります。これらのデータから長距離レースと血統に関して考えていきましょう。
2021年以降の注目馬
上のデータを見て分かる通り、長距離血統と呼ばれる血統がある程度存在していることはわかるかと思います。そこでここでは2021年以降に注目できそうな種牡馬を紹介していきましょう。
スワーヴリチャード | |
父 | ハーツクライ |
母父 | Unbridled’s Song |
現役実績 | 2018年 大阪杯(GⅠ) 2019年 ジャパンC(GⅠ) |
注目したいのがハーツクライ産駒のスワーヴリチャードです。現役時代は中距離で活躍した馬ですが、父は長距離血統のハーツクライ。母父Unbridled’s Songはコントレイルと同じであり、スピードも強化されている血統です。
スタミナを補完してくれるような繁殖牝馬や、底力のある牝系との配合で、長距離馬が誕生するかもしれません。
レインボーライン | |
父 | ステイゴールド |
母父 | フレンチデピュティ |
現役実績 | 2018年 天皇賞・春(GⅠ) |
オルフェーヴル、ゴールドシップと同じステイゴールド産駒のレインボーラインは天皇賞・春を勝った実績から長距離種牡馬として期待がかかります。さらに3歳時にはNHKマイルCで3着するなどスピードがあるのもポイント。
また、父ステイゴールドということは、サンデーサイレンスの4×3というクロスが発生しやすい血統でもあり、この点でも注目が集まります。
ラブリーデイ | |
父 | キングカメハメハ |
母父 | ダンスインザダーク |
現役実績 | 2015年 宝塚記念(GⅠ) 2015年 天皇賞・秋(GⅠ) |
キングカメハメハは特に長距離血統ではありませんが、それでも長距離レースで好成績を収めている種牡馬です。そんなキングカメハメハの後継種牡馬で、特に長距離レースで注目したいのがラブリーデイ。
自身は長距離路線では結果が出なかったものの、母父に菊花賞馬のダンスインザダークがおり、母父父にサンデーサイレンス、母母父にトニービンと優秀な血統が集まっている種牡馬で、配合相手次第で長距離馬が誕生する可能性を感じさせます。
長距離馬の仔が長距離馬になるとは限らない
ここまでは長距離レースは長距離血統が強いということをベースに話を進めてきましたが、最初に紹介した種牡馬ランキングにはジャスタウェイやダイワメジャーなど、基本的に長距離血統ではない馬の名前も並んでいます。
実は、長距離馬の仔が長距離馬になるとは限らないというのが血統の面白いところ。この代表的な例をご紹介しましょう。
ステイゴールドとサッカーボーイ
オルフェーヴルやゴールドシップといった長距離適正のある産駒を出し、さらに孫の代も長距離レースで結果を出しているステイゴールド。このステイゴールドの血統を見てみましょう。
ステイゴールドの母はゴールデンサッシュ。その父はディクタス。母はダイナサッシュという馬になります。このゴールデンサッシュと全く同じ血統の馬に、競馬ファンなら誰しも名前くらいは聞いたことがある名馬がいます。
それがサッカーボーイです。
サッカーボーイはゴールデンサッシュの全兄。1987年8月にデビューすると、その年の阪神3歳S(現在の阪神JF)を8馬身差で圧勝し、世代のナンバーワンホースとなります。
迎えた88年春。日本ダービーで1番人気に推されるも15着に大敗。しかしここから強烈な成績をたたき出します。
ダービー後に出走した中京スポーツ賞4歳S(現在のファルコンンS。当時は芝1800m)で、同年の皐月賞馬ヤエノムテキを破り勝利すると、続く函館記念では、前年のダービー馬メリーナイスを5馬身ちぎり捨て、当時の日本レコードタイムで連勝します。
休み明けで迎えた次走マイルチャンピオンシップでも、2着を4馬身突き放して初GⅠ制覇、続く有馬記念であのオグリキャップの3着に入り、このレースを最後に引退しました。
サッカーボーイはマイルから2000mで、強烈なスピードと強烈な決め手を見せた名馬。当然引退後は種牡馬の道を歩きます。
注目はサッカーボーイの代表産駒。ナリタトップロードは菊花賞を勝ち、ヒシミラクルは菊花賞、天皇賞・春、宝塚記念を勝った生粋のステイヤーです。ほかにもステイヤーズSや阪神大賞典を勝ったアイポッパーがおり、代表産駒の多くがステイヤーとして活躍しました。
サッカーボーイとその産駒は明らかにタイプが違いますが、こういったケースは競馬界ではままあること。長距離馬の仔だから長距離適正があると思い込まないようにするのが重要といえるでしょう。
長距離レースのレース傾向にも変化が
もうひとつ注目したいのが、20年ほど前から顕著になりつつある長距離レースの変化です。かつて競馬界には「テレビ馬」という存在がいました。最近競馬を始めた方にはあまり耳慣れない単語かと思いますが、30年前にはまだ存在していたタイプの馬です。
当時の中央競馬は最大24頭立て。この中には、GⅠレースにおいて、とりあえず先頭に立ってテレビに映ろうという「テレビ馬」という存在がいました。このテレビ馬の影響で、長距離レースでもペースが遅くなるということはあまりなく、ミドルペースからハイペースで、スタミナの削り合いが行われていたのです。
こういった展開ではスタミナ自慢の血統がものを言います。つまり当時の方が長距離レースにおける血統予想の価値は高かったということになります。現代の競馬新聞などで予想をしているベテラン記者は、こうした時代を知っている方が多く、こういったベテランほど血統を頼りに予想する傾向があります。
一方近年の長距離レースは、テレビ馬という存在もなく、基本的にスローペースで行われることがほとんどです。こうなると大事になるのは距離適性以上に最後の直線で見せる切れ味。こういった展開になると、長距離は得意ではないといわれているディープインパクト産駒も出番があるわけです。
参考までに、1992年の菊花賞。レースのペースを作ったのは無敗の二冠馬ミホノブルボンで、1000m通過は59秒7というハイペースでした。このレースでミホノブルボンの無敗の三冠馬の夢を打ち砕いたのが、父リアルシャダイ(ロベルト系)×母父マルゼンスキー(ニジンスキー系)といういわゆる長距離血統のライスシャワーでした。
一方父ディープインパクトに続き、無敗で菊花賞を制した2020年のコントレイル。この菊花賞のペースが1000m通過62秒2。このスローペースだからこそ、コントレイルの切れ味で差し切れたとも考えることができます。
長距離レースは距離適性だけではなく、道中のペースも予想し、どのような馬が有利になるかを考えて予想するのが重要なポイントとなります。
予想で活用する際の2つのポイント
では、実際に血統から長距離レースを予想する際のポイントをおさらいしておきましょう。ポイントは大きく分けて2つ。それぞれ解説していきます。
長距離実績のある種牡馬・BMSを探す
血統を重視して予想する場合、ある程度長距離レースに実績のある種牡馬を選びましょう。上の表を参考にすると、ハーツクライやルーラーシップなどの人気種牡馬に加え、オルフェーヴル、ゴールドシップ、ステイゴールドなどが注目すべき種牡馬となります。
また、BMSも軽視できないポイントです。種牡馬がスピード寄りの血統でも、母父がスタミナを補完しているケースがあります。過去の長距離レースで結果を出している父馬とBMSの組み合わせなどをチェックしておくといいでしょう。
レースペースを見極める
血統と同時に見極めたいのがレースペースです。長距離レースでも基本的にペースと血統の関係性は同じで、ハイペースはスタミナ勝負、ミドルペースはスピードの持続性、スローペースは瞬発力勝負になります。
出走各馬の近走タイムや過去の走りをチェックし、どの馬がどの程度のペースで逃げるのか、ペースは落ち着くのか、上げ下げが激しくなるのかなどを予想し、そのペースで力を発揮できそうな血統の馬を探すのがおすすめです。
まとめ
長距離レースこそ血統理論の出番という方も少なくありませんが、これはある程度正解です。長距離レースや短距離レースなど、極端な条件ほど血統による素質が影響する可能性が高くなるのは間違いありません。
とはいえ、長距離レースは長距離血統が勝つ、長距離が得意だった種牡馬の仔が勝つとは限りません。そのレースのペース、相手関係、そしてその種牡馬の特徴、BMSとの相性などを総合的に見て判断する必要があります。
血統別のデータや血統知識があるだけで予想の幅も広がり、的中率も上げることができます。少しずつ血統理論を勉強していくのがいいでしょう。まず手始めにスマホアプリなどで、競馬予想と血統の関係を勉強するのがお手軽でおすすめです。
スマホアプリの詳しい記事は以下の記事にまとめてありますので参照してみてください。