競馬の血統理論の中に「ニックス」というものがあります。いわゆる両親の血統の相性を表す言葉で、ニックスが発生している血統は相性が良い血統といわれます。
実際の競馬でもこの相性に触れられることはありますが、より使われるのが馬産を行うような競馬ゲームでしょう。
ゲームでも実際の競馬でも利用できるニックス、血統の相性に関して解説していきましょう。
目次
「ニックス」という考え方解説
血統の好相性を表現するニックスですが、実際にどのような考え方で設定されているのか、どのように作られるのか、どこを見ればわかりやすいのかなど、ニックスの考え方に関して簡単に解説していきましょう。
相性は父馬と母父馬で見る
ニックスを確認する場合は、父馬と母馬の血統の相性を見ることになります。父馬は父系の血統、系統を確認し、母馬その父から連なる系統を確認することでその相性を推測します。
例えば2021年の皐月賞と天皇賞・秋を制したエフフォーリアの血統を見てみましょう。エフフォーリアの父はエピファネイア(Hail to Reason系)、母の父はハーツクライ(サンデーサイレンス系)となります。
サンデーサイレンス系は遡ればHair to Reason系となるため、似た系統の組み合わせとなります。この組み合わせの相性がいい血統の組み合わせをニックスが発生しているといいます。
ちなみにエフフォーリアの血統は、「現状」ニックスというわけではありません。この「現状」という部分に関して次の章で解説しましょう。
理論的に作られるものではない
そもそもニックスというものは存在しているものですが、理論的に導き出されるものではありません。つまり、なぜその組み合わせがニックスと呼ばれているのかは、だれも説明できないということになります。
ではなぜニックスは存在するのか。それは実際に同じ組み合わせの馬の成績がいいという事実から、ニックスと認定されます。
上でエフフォーリアの血統に関して、現状ではニックスではないと書きましたが、これは現状そこまでこの組み合わせが結果を残していないからにほかなりません。今後同じ組み合わせで結果を残す馬が増えれば、父エピファネイアと母父ハーツクライもニックスと呼ばれるようになるかもしれないということになります。
日本競馬で有名なニックス配合
理論的に説明がしづらいニックスですが、実際に過去を振り返っても多くのニックス配合が存在しました。そこで2021年現在の日本競馬で活躍する、また活躍のベースになっているニックス配合をご紹介しましょう。
【父】サンデーサイレンス×【母父】ノーザンテースト
代表産駒 | 戦績 | 主な勝ち鞍 |
ダイワメジャー | 【9.4.5.10】 | 皐月賞 天皇賞・秋 マイルCS(2勝) 安田記念 |
デュランダル | 【8.4.1.5】 | スプリンターズS マイルCS(2勝) |
アドマイヤマックス | 【4.2.5.9】 | 高松宮記念 |
エアメサイア | 【4.4.2.2】 | 秋華賞 |
ローゼンカバリー | 【7.2.5.19】 | セントライト記念 AJCC 日経賞 目黒記念 |
フサイチゼノン | 【3.1.0.4】 | 弥生賞 |
アグネスカミカゼ | 【5.1.1.6】 | 目黒記念 |
キングストレイル | 【4.5.3.23】 | セントライト記念 京成杯AH |
エアシェイディ | 【7.10.5.15】 | AJCC |
1980年代の日本競馬界はノーザンテースト産駒の天下でした。その影響で日本競馬の種牡馬、繁殖牝馬にはノーザンテーストの血が多くなり、このノーザンテーストの血と相性がよさそうな種牡馬がどんどん輸入されたのが1990年代になります。
トニービンやブライアンズタイムに続いて輸入されたのがサンデーサイレンス。このサンデーサイレンスと母父ノーザンテーストの組み合わせはニックス配合と呼ばれ、多くの産駒が誕生し、非常に高い勝ち上がり率をマークしました。
この流れでサンデーサイレンス系とNorthern Dancer系という系統同士もニックスとなっており、この系統同士のニックスで誕生したのがディープインパクトになります。
2021年現在活躍している種牡馬・繁殖牝馬の中には、このニックスを持つ馬が多く存在しています。
【父】ステイゴールド×【母父】メジロマックイーン
代表産駒 | 戦績 | 主な勝ち鞍 |
オルフェーヴル | 【12.6.1.2】 | クラシック三冠 有馬記念(2勝) 宝塚記念 |
ゴールドシップ | 【13.3.2.10】 | 皐月賞 菊花賞 有馬記念 宝塚記念(2勝) 天皇賞・春 |
ドリームジャーニー | 【9.3.5.14】 | 朝日杯FS 宝塚記念 有馬記念 |
フェイトフルウォー | 【3.0.2.5】 | セントライト記念 |
重賞勝ち馬4頭でニックスというのはどうかと思われるかもしれませんが、中央競馬でデビューした父ステイゴールド×母父メジロマックイーンの血統はわずか45頭。このうち中央で勝ち上がった馬が17頭(勝ち上がり率37.8%)。これは驚異の高確率といえます。
さらにそのうち4頭が重賞勝ち馬、またGⅠ勝利は全部で15勝。こちらも驚異的な数値といえます。
父サンデーサイレンス×母父ノーザンテーストと母数が違うものの、残した結果は偉大であり、立派にニックス血統といえるでしょう。
【父】ディープインパクト×【母父】Storm Cat
代表産駒 | 戦績 | 主な勝ち鞍 |
ラヴズオンリーユー | 【6.2.3.3】 | オークス QEⅡ世C(香港) |
リアルスティール | 【4.5.2.6】 | ドバイターフ(ドバイ) |
ダノンキングリー | 【6.2.2.3】 | 安田記念 |
エイシンヒカリ | 【10.0.0.5】 | イスパーン賞(仏国) 香港C(香港) |
サトノアラジン | 【8.5.3.13】 | 安田記念 |
ラキシス | 【5.3.0.9】 | エリザベス女王杯 |
キズナ | 【7.1.2.4】 | 日本ダービー |
アユサン | 【2.1.1.4】 | 桜花賞 |
現役馬の中にも多くの活躍馬がいるのがこのニックス配合。Storm Catの血統はNorthern Dancer系の種牡馬。このニックスもサンデーサイレンス系×Northern Dancer系となり、父サンデーサイレンス×母父ノーザンテーストと同じ流れの配合となります。
クラシックやマイルあたりで活躍するスピード馬が多く、今後の日本競馬界の中心となるニックス配合といえるでしょう。
POGで活躍するシーンも
ニックス配合の中には、爆発的な大物が誕生する配合もありますが、どちらかというと平均的に活躍馬が出やすい配合であるといえます。つまり産駒の勝ち上がり率が高く、この点ではPOGなどでは大いに活用できる配合といえます。
POGとは?
知らない方もいらっしゃるかと思いますので、POG(ペーパー・オーナー・ゲーム)について簡単に説明しておきましょう。POGは本来友人同士で行うゲームですが、近年では競馬情報サイトなどでも楽しめるコンテンツになっています。
POGのルールは競馬情報サイトなどによって様々ですが、基本的にはデビュー前の馬をドラフト会議のように指名していくゲーム。そして指名した馬がデビューし、獲得した賞金で順位を争うゲームです。
一般的には6月の2歳新馬戦をスタートに、翌年の日本ダービーまでの約1年で争い、1人10頭ほどの指名馬で争うケースが多いかと思います。
このPOGで馬を選ぶには、馬体を見る相馬眼と、血統知識が非常に重要。当然ニックスという概念も理解していないとなかなか勝つことができないゲームです。
高確率で走る馬が見つかる
POGゲームでは、当然ながらGⅠレースを勝つような強い馬を指名するのが目指すところです。しかし多くのPOGは、指名馬の獲得賞金で争いますので、まずはデビューする馬、そして1勝でもしてくれる馬を指名するのがポイントとなります。
こうなると大きな武器になるのがニックスの知識。ニックス配合の馬は勝ち上がり率が高いといわれており、POGで指名できれば非常に有利になります。
競馬情報サイトで行われているPOGゲームなどは、無料でも参加できるケースもありますので、試しにデビュー前の馬の情報を集め、参加してみるといいでしょう。
その際参考にしたいのが血統理論。血統理論の勉強方法に関しては以下のサイトで解説しています。
ニックスが最大限生かせるのはスマホアプリの競馬ゲーム
ニックスに関しては、クロス(インブリード)のように血統表でわかりやすく明記されていることはまずありません。それだけに意識しにくい部分がありますが、このニックスの知識を身に着ける、また体感できるという方法の一つにゲームアプリがあります。
ゲームアプリの中には、実際にニックスの考え方を採用しているものもあり、こうしたゲームで活用することができます。
また、こういったゲームアプリは、実際の血統理論を学ぶためにも非常に有効ですので、ニックスを体感したい方、血統を少し勉強してみたい方などにはおすすめです。
ちなみにニックス同様ゲームアプリでも使える「クロス(インブリード)」に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
また、ゲーム以外に血統の情報を得たり、勉強ができるアプリに関しては、以下の記事を参考にしてください。
ダービーインパクト
人気スマホアプリゲーム『ダービーインパクト』でも当然ながらニックスは採用されています。ダービーインパクトの場合、系統ごとにニックスが発生する仕様となっており、多くの系統でニックスの存在が確認されています。
さらにこのゲームでは、父の系統と「母父の系統」、「母母父の系統」、「母母母父の系統」の3か所でニックスが発生する仕様になっており、これをトリプルニックスと呼んで強豪馬を作るスタンダードな方法の一つとなっています。
実際の競馬通りというわけではありませんが、このゲームにおいては大事な要素。もちろん発生するニックスは現実の競馬でも相性がいいといわれている組み合わせですので、血統の勉強にもなるでしょう。
ダービースタリオンマスターズ
馬産ゲームの先駆けともいえる家庭用ゲーム機ソフト『ダービースタリオン』のスマホアプリ版『ダービースタリオンマスターズ』にもニックスの考え方は採用されています。
ダービースタリオンマスターズでは、ニックスをポイント制で採点。多くのニックスを内包する配合は、合計ポイントが高くなり、その分強い馬が生まれる仕様になっています。
ポイントの高いニックスを紹介すると、「Hail to Reason系×ノーザンダンサー系」、「ブランドフォード系×フォルティノ系」、「Hail to Reason系×マイバブー系」。
実際の競馬で説明すると、サンデーサイレンスの血が父系に入っている馬はHail to Reason系、ノーザンダンサー系はStorm Catやヘニーヒューズ、クロフネなど、ブランドフォード系はノヴェリストなど、フォルティノ系はコジーンの血統など、マイバブー系はパーソロンなどがいる系統になります。
現実の競馬で活用できるのはHail to Reason系とノーザンダンサー系といったところですが、ゲーム内では過去の名馬も登場するため覚えておくといいでしょう。
まとめ
競馬の血統にはニックスという考え方がありますが、研究の末に見つかった配合であったり、理論的に説明できる配合ではありません。
実際に配合してみて、走る馬が多ければ後にその配合はニックスといわれるようになるのが現実。つまり非常に相性のいい配合ということになります。
ニックスは馬券予想にも活用できないわけではありませんが、どちらかといえば血統知識の一つ。馬券予想よりもPOGやゲームアプリなどでより有効に活用できる知識となります。
実際に馬券予想に血統を活用したいという方は、以下の記事を参考にしてみてください。